(もしもその日がやってきたら、)






私は髪を切るでしょう。
二度と簪は買わないでしょう。
料理を練習するでしょう。
嫌がっていた日記をつけるでしょう。
小刀を隠してしまうでしょう。
毎晩、あなたの夢をみるでしょう。



ええ、そう。分かっているんです。
私は奥州独眼竜の妻。私の愛した彼は、戦場に生きる人。
愛したことに後悔はないんです。
自ら刀を振り上げて、敵地に斬りこんでいくあの背中に、私は恋をした。
政宗だからこそ、私は彼を愛したの。

でも、ねぇ。あなたは分かって。

理解したところで、その事実を受け入れる術を、私は持たないの。


だから、私は誓ったんです。

もしもその日がやってきたら、



私は髪を切るでしょう(あなたのいない俗世に興味なんて)
二度と簪は買わないでしょう(あなたが選んでくれたものしか身に付けたくない)
料理を練習するでしょう(あなたの味を少しでも再現したいの)
嫌がっていた日記をつけるでしょう(そうしないとあなたのいない日々に押し潰されてしまう)
小刀を隠してしまうでしょう(あなたの後を追ってしまうから)

毎晩、あなたの夢をみるでしょう(あなたに、会いたい)






欠落した左胸








2010/10/06
だって彼は、私の半身なんだもの。

Title=「月にユダ」様