「………」 「………」 「…なぁ。俺、何かしたか?」 「いいえ。ダンテは何も悪くないわ」 「じゃあ聞くが、何でこいつはこんなに沈んでるんだ? 気になって夕飯もロクに味わえねぇ」 「あー…ごめんなさい。実はちょっとだけダンテも関係してる、かも」 「なに!?」 「話せば長いんだけど…」 「……、」 「あのね、今日バージルと本屋に行ってたじゃない?」 「(あっ無視した!)」 「………」 「(更にヘコんでやがる…まぁ良いか)ああ、あの結構古い馴染みの店だろ。で?」 「その店のカウンターに、バイトで新しく入ったらしい日本人の子がいたの」 「へぇ、珍しいな」 「でしょ。でもその子、まだこっちに来て日が浅いみたいで英語がうまく喋れないらしくて」 「そりゃま、仕方ねぇな。大変なんだろ? 違う国の言葉の修得ってのは」 「もちろん。ダンテは話が早くて助かるわ」 「…でも待てよ、それが何でこいつが沈んでる原因に繋がるんだ?」 「……、もう」 「人の話は最後まで聞くものよバージル」 「………(何で俺だけ…)」 「(…コイツ、本当にには弱いな)」 「私が店内を回ってる間に、バージルが取り置きしてもらってた本を引き取ろうと その子に声を掛けたらしくて」 「まさか、その子の対応の悪さにこの重っ苦しいオーラをまき散らしたとか?」 「…俺はそんなことはしない」 「でも惜しい! 対応自体は問題なかったのよ。問題はその時呼んだ名前」 「名前?」 「ほら。取り置きしてもらったり予約したりする時って、名前を確認するでしょう?」 「まぁな」 「日本語と英語って、発音が全くと言っていいほど違うってこと、知ってる?」 「………あ、」 「その女の子、バージルのこと『ばーじる』って それはもう可愛らしく舌っ足らずな声で呼んだのよ!! それからずっとこの調子」 「………(思い出したくもない)」 「(昔っからこういうことにうるさい奴だったからな…無理もないか) あ〜、だから俺も関係してるって言ったんだな」 「発音が比較的簡単な上に短いからね。日本人には言いやすい名前よ、きっと」 「そりゃ災難だったなぁ、お兄チャン?」 「バージルは日本が好きだもんね。自分と名前とのギャップがショックだったんじゃない?」 「………」 「(まただんまり決めてやがる…)」 「あぁもうバージル。夕飯ぐらいゆっくり食べようよ」 「…ああ」 「今度、私で良ければ日本語教えてあげるから。 言葉の違いと難しさが分かったらきっとバージルにも納得できるよ」 「…ああ……」
031,あきらめましょう
「で、まさかそれだけのことでこんなに沈んでるわけじゃねぇだろ。 本当の理由は何だ?」 「…それを聞いていたに、帰り際『可愛いね、ばーじる?』と笑われた…」 「……そりゃ、複雑なことで」 2005/11/19 うちのヒロインさんは一時期、日本で暮らしてました設定(日本贔屓なのはそのせい) 楽しかった分、色々苦労もしたようです。そのうち小話も書きたいな。 |