鬼ごっこなんて何年ぶりだろう。
昔はロードにせがまれて、ときどき相手もしてやったけど、
あいつは飽きっぽいから5分と続いた試しがなかった。
そう考えると、オレとお前とのこの追いかけっこは最長記録じゃないか?


「…っはぁっ…はっ…!」


ごめんな。
たとえ今までは冗談交じりの戯れだったとしても、今回ばかりは逃がしてやれない。
お前の悪いところは一度信用した相手を一途なまでに信じ続けるところだよ。
だから足元に張り巡らされた蜘蛛の糸にさえ簡単に引っ掛かっちまう。
まぁ、持ち前の身のこなしで逃げられたことなんて何度あったか知れないけど。


「…はぁっ…ティキ、あなた本気なの…っ?!」


その細い腕を捕まえたら、まず最初に何をしようか。
着せ替え? お茶会? 恋人同士の真似事?
それともオレの花嫁になって、新婚旅行がてら世界の終焉でも見に行くか?



「だって、私が愛したのは……っ!!」



おかしいな。
ノイズが混じって、お前の声がよく聞こえないんだ。
あたりの空気は甘く、二人を照らす月明かりはひどく優しいのに。

なぁ
オレはイノセンスなんて、本当はどうでもいいんだよ。


「オレはさぁ、自分が触れたいと思ったものだけをこの手にできるんだ」


なぁだから、そんな怖い顔しないで。
頼むから。



「だから、お前の心を、オレに頂戴?」





君の を掌に










2005/11/07
私が愛したのは、今のあなたじゃないあなた。
太陽の光を眩しいと笑いながらも、喜んで両腕を広げた、あなた。