「ウルは寡黙なんだね」
「…突然何だ。しかも俺はそんな名ではない」
「だって『ウルキオラ』って長いんだもの。グリムジョーは『ジョー』よ、可愛いでしょう」


気性の激しいあの男を可愛い、と言ってのけるのはおそらく彼女くらいだ。
そしてこの俺の性格を寡黙だと何気ない様子で言い切ってしまうのも。
無感情だとか、無愛想だとか、
他にも言い方はいくらでもあるだろうに。


「…ねぇ、もしかして怒ってる?」
「なぜそう思う」
「だってウル、機嫌が悪いと少しだけ眉間に皺が寄るんだもの」


今みたいに、と遠慮がちに指差されて、
ようやく自分が彼女の言う不機嫌な顔になっていたことに気付く。
別にに対して不機嫌になっているわけではなく、
二人きりの会話にまで出てくるあの男の名前に過敏に反応してしまっただけの話なのだが、
全くの他人である彼女にわずかな感情の起伏を指摘されて少なからず驚いた。

沈黙を肯定と取ったらしいが心配したような声で、
ウル、ウル、と繰り返す。
弁明する必要はない、と無視を決め込んだ俺に、
しまいには「ウルキオラ」と、彼女曰く長い名前を呼び出す声を聞きながら瞬きをする。

彼女に呼ばれる自分の名前はこんなにも心地よかったのか。
耳の奥で木霊する音の美しさに目を伏せた。






胎児のまどろみ










2007/10/10
男前なグリムジョーファンの方、ごめんなさい(もう遅い)