目を差し出された。

比喩表現でもなんでもない。本当に、丸くてつやつやした眼球をずいっと差し出された。
私は当然のようにその場に固まって(それはもう見事なまでに)
ぎぎぎ、と鈍い音でもしそうな動きで相手を見上げる。
私をそんな状態にさせている張本人のウルキオラは、なぜかそんな私の反応を妙に思っているらしく、
細い眉をほんの少しだけ歪ませて首をかしげた。
それでも私の顔の前に突き出したままの腕を下ろすつもりはないらしい。


「あの、ウルキオラ?」
「なんだ」
「ええっと、私にこれを一体どうしろと…」
「やる」
「はぁ……って、え?」


いま彼はなんて言った?
私の耳がおかしくなっていなければ、彼は自分の目を私にくれるつもりらしい。
…自分の眼球をプレゼントだなんて聞いたことがない。


「欲しがっていただろう」


首をかしげたまま言葉を続けるウルキオラは、
私が彼の贈り物を素直に受け取らない理由が本気で分からないらしい。
この私がいつあなたの眼球を欲しがったというんだ。
…そりゃ確かに綺麗だなぁとは思っていたし、
あの目が自分を特別な色で映してくれたらいいと思ったことがないわけじゃない。

でも、どうしてウルキオラはそのことを知っていたんだろう。
人に言ったこともない、ましてや私のような、階級の低い者の思いなんかを。


返事に困って、とりあえず私の前から動こうとしない彼を見上げる。
じっと私を見下ろすウルキオラの片目はぽっかりと暗い穴が開いていた。
「痛くないの」と聞いたら「痛くはない」と返ってくる。
その憮然とした言い方がなんだかたまらなく愛しくて、思わずその首に抱きついた。
今度はウルキオラが見事なまでにその場に固まった。






プルチネラの寸劇










2008/07/08
プルチネラ…イタリア即興喜劇に出る道化役