起きているときでさえ馴染みのない自分の叫び声に、 目を覚ますのと同時にベッドから飛び起きた。 にじみ出た汗が身体を起こした反動でこめかみ辺りを伝っていく。 全身がひどく熱い。久しぶりの感覚に、酸素を求めて激しく上下する胸が軋むように痛んだ。 傷が疼くのにも似た火照りに冷たいシーツの感触を求めて指がさまよう。 しかしその反面、心の内はなぜか静かに冷え切っていた。 しっかりとカーテンで隠された窓の外はまだ真夜中だ。 辺りの空気も静寂そのもの。 それでも、わずかな隙間から細く差し込む月明かりのせいで、 視界が完全に闇に呑まれるということはない。 に「出来ればで良いから」とせがまれ、 (彼女は棺桶とは死者のみが眠るものだという常識がどうしても抜け切らないらしい) 棺の中ではなく、こうしてベッドで寝るようになったのはいつ頃だったろうか。 もう随分と前だった気がする。 そして、悪夢の中で自分の名を呼びながら死んでゆく女性のシルエットが、 はっきりとにすり替わったのも。 細い身体が倒れていく残像が脳裏に浮かんだ。 思わずうつむいた先に見えた、シーツを握る自分の指が赤く見えたような気がした。 深い血だまりの中で、支えを失った人形のように、その身体がことさらゆっくり地面に落ちていく。 助けを求めるように伸ばされる腕。その腕を掴む前に、彼女は瞳を閉じる。 まさにその瞬間、苦しげに天を仰いだは自分の名前を呼ぶのだ。 「ヴィンセント」と、最期の力で、他の誰でもない自分の名前を。 汗となにか別の液体に濡れた顔を両手で覆った。 思っていたよりもずっと深い自分の傷と身勝手さに、 今すぐここから消えて無くなってしまいたいと頭を抱えた。 019,手負いの獣 が
みる悪夢
2006/06/03 |