シャイニング
プレリュード は手をつなぐのが好きだった。 旅の途中でもよくエアリスやティファとつないでいたし、 (ユフィは照れて離れていたようだが) クラウドやシドといった面々とは腕を組んで歩いたこともあった。 それはもちろん仲のいい友人とじゃれる程度のものだったが、 相手の男たちは一様にくすぐったいような、照れたような顔をして歩いていた。 しかし、まさかその対象に自分が含まれる日が来るなど、思っても見なかった。 あまりにも自然に指が絡んだから、驚きの声をあげる暇もなかった。 一瞬動きの止まった私を不審に思ったのか、 手にした茶色の紙袋を抱えなおす彼女が不思議そうに首を傾げる。 「どうしたの? ヴィンセント」 「いや……その、」 「え?」 「…手を」 握られたから、と最後までは言えなかった。 言ってしまえば彼女はこの手を放してしまうかもれない。さっきと同じ、とても自然な動きで。 それが嫌だった。どうしてだか、たまらなく。 「あっ! ごめんなさい、ついエアリスたちといる感覚で…嫌だった?」 「そんなことは、ない。だが…」 「だが?」 「冷たく、ないのか」 そう呟く私の声が、先程より低くなったことに気付いたのだろうか。 少しだけ微笑んだは何も言わず、つないだ手に力を込める。 ほっそりとした女性の指が優しく掌を包み込んだ。 「いいえ。ちっとも」 『あなたはあたたかい人だから』 「…そうか」 そうやわらかく目を細めた彼女に、『ありがとう』と言い損ねた。 2006/12/12 |