聞いて聞いて、とが嬉しそうに私の部屋へやって来たのは、
午後4時を少し回った頃だった。


「今日はすごく天気が良くてね、シーツをたくさん干したの」


しばらく雨続きだったでしょう、と窓の外を指差すに小さく頷く。
雨の日は彼女の具合が悪くなることが多い。ここ数日も少し気分が悪そうだった。
彼女が健康な頬の色で笑っていてくれるなら、それ以上のことはない。


「新しい洗剤も使ってね、自信作なの。
 たくさん取り込んだからヴィンセントにもお裾分け。
 あんまり太陽の光が得意じゃなくても、これなら大丈夫でしょう?」


「棺を開けておいてくれる?」とだけ言ってから姿を消したは、
彼女の言うとおりにしておいた私のところへ、今度は一枚の大きなシーツを持って現れた。
丁寧に畳まれていたそれを二人で広げ、端と端を掴んできれいに皺を伸ばす。


「これでよし。今夜はきっと良い夢が見られるよ」


目の前の光景に満足そうに微笑んで、伸ばしたシーツをしわりと撫でる。
その柔らかい仕草は、心に染み付いた悪夢の足音を遠ざけてくれるような気がした。





Good Night,
Innocent Night





その夜はいつもよりずいぶん早く棺に横になった。
冷たい背中に触れるシーツが心なしかあたたかい気がする。
久しぶりに満ち足りた気持ちで目を閉じたその夜、怖ろしい夢は欠片も現れなかった。






2007/11/16
その日は彼女の夢を見た。