夕暮れ間近のグラウンドは俺たち二人だけの貸切だった。
最後まで粘ってバッドを振っていた俺と、そんな俺をずっと待っててくれた
片付けを終え、すっかり人の気配が消えた学校からの帰り道、
オレンジ色に染まったグラウンドを横切りながら見上げた夕陽があまりにきれいだったから、
少しはしゃいで「よーいどん!」なんて笑いながらその場を駆け出す。
一瞬だけ驚いた顔をしたも、すぐに楽しそうな顔で俺の後ろを走り出した。
誰もいないオレンジの海を二人で疾走する。


「ははっ、って足速いのな!」
「ありがと。でもやっぱり、山本くんにはかなわないよ」


思いつきのかけっこはすぐに終わった。
肩にかけたスポーツバックを背負いなおしながら、校門の前あたりで足を止める。
すぐ横でも軽く乱れた息を整えながら足を止めた。
久しぶりに走った、と笑う彼女が帰宅部とは思えないほど足が速いことを知ったのは初めてだ。


「なんで陸上部とか入らなかったんだ?もったいねぇって」
「そ、そうかな。だって部活って夜遅くまで練習あるし、私にはキツそうだったから…
 …って、野球部で頑張ってる人に向かっていう台詞じゃないか」


ちょっと困ったように眉を下げて、はにかむように笑う。
夏の初めの風にスカートの裾が揺れた。すらりと伸びた足から細い影が伸びてる。


「でも野球部エースのお言葉も貰えたし、頑張ってみようかな」
「ん?」
「もっと早く走れるように」


ぱっと校門を通り抜けて、オレンジ色の景色の中でが笑う。


「誰よりも早く山本くんの隣にいけるように!」






放課後疾走
FunnyDay






2008/08/23
だから、どっかに行っちゃう前に捕まえててね。